国立がん研究センターとペンシルバニア大学が共同保有する「CCR4標的キメラ抗原受容体T細胞療法」特許を国がん発ベンチャー企業へ実施許諾
成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)などへの細胞療法開発が始動
東京、2024年7月11日 /PRNewswire/ -- 国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)研究所(所長:間野博行)と米国ペンシルバニア大学(ペンシルベニア州、フィラデルフィア市)は、両者の共同研究の成果に基づいて特許出願された「CCR4(注1)標的キメラ抗原受容体T細胞療法(CCR4 CAR-T細胞療法(注2))」について、同特許の実施権を国立がん研究センター発ベンチャー企業であるARC Therapies株式会社(代表取締役社長・CEO:鈴木蘭美、本社:東京都新宿区)に許諾しました。これにより、日本に多い成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)(注3)をはじめとするT細胞のがんに対する細胞療法の臨床開発が始動します。さらに、本CCR4 CAR-T細胞療法は、固形がんに対しての展開も期待されており、固形がんでの臨床開発も視野に取り組んでまいります。
国立がん研究センター研究所は1962年に設立されて以来、日本のがん研究を牽引してきました。
米国ペンシルバニア大学は先駆的な研究と共同開発に取り組み、2017年FDAによるCAR-T細胞療法製剤の承認を世界で初めて取得し、現在も次世代型を含めたCAR-T細胞療法の研究で世界をリードしています。
ARC Therapies株式会社は、2022年5月に設立された国立がん研究センター認定ベンチャーであり、最先端の研究を駆使して新たな細胞治療の研究と臨床開発を推進しています。
国立研究開発法人国立がん研究センター 研究所長 間野 博行のコメント
国立がん研究センターでは、様々ながんの発がん機構の理解から治療法・診断法の開発までを一貫して強力に推進しています。その結果の一つで国際的な共同研究の成果である「CCR4標的キメラ抗原受容体T細胞療法」が、新規治療候補の開発に向けて国立がん研究センター発ベンチャー企業への実施権許諾合意に至ったことを嬉しく思います。今回の合意に基づき、国立がん研究センター発の新規T細胞療法の実用化が加速することを期待しています。
ARC Therapies株式会社 代表取締役社長・CEO鈴木蘭美のコメント
国立がん研究センターならびにペンシルバニア大学の協力のもと、「CCR4標的キメラ抗原受容体T細胞療法候補」の研究と開発に取り組んで参ります。キメラ抗原受容体T細胞療法の効果は長期にわたって持続することが知られており、私たちの取り組みが、がんの患者さんにとって有用な選択肢になることを願います。
用語解説
注1)CCR4
CCR4とは、主に皮膚に遊走するリンパ球上に発現しているケモカイン・レセプターです。成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)、末梢性T細胞リンパ腫(PTCL)、皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)の細胞表面に発現している。抗CCR4抗体「モガムリズマブ」が上記の3がん種の治療薬として保険承認されている。また、CCR4は腫瘍周辺の制御性T細胞にも発現しており、制御性T細胞除去療法により固形がん治療の標的となる可能性もある。
注2)CCR4 CAR-T細胞療法
患者から採取した白血球にCCR4と特異的に結合する抗体(一本鎖)と細胞内情報伝達酵素を結合した遺伝子を導入して作成した組換えT細胞。患者に注射すると自ら遊走し、CCR4を発現している腫瘍組織に集結、活性化してがんを攻撃することが期待される。
注3)成人T細胞白血病リンパ腫(ATLL)
ヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の感染を原因とする希少がんかつ難治性の血液がん。造血幹細胞移植以外に治癒に至る治療法がない、予後不良の疾患。日本でもHTLV-1の感染が認められており、第4期がん対策推進基本計画にもHTLV-1総合対策について記載され、国家的課題として対策が進められている。抗CCR4抗体で急性型、慢性型のATLLの治療に成功しているが、再発が問題となっており、またリンパ腫型ATLLには現在のところ有効な治療手段がない。
<お問い合わせ先>
研究に関する問い合わせ
国立研究開発法人国立がん研究センター
研究所 腫瘍免疫研究分野
渡邊 慶介
電話番号: 03-3542-2511(代表)
Eメール: [email protected]
広報窓口
国立研究開発法人国立がん研究センター
企画戦略局 広報企画室
電話番号: 03-3542-2511(代表)
Eメール: [email protected]
ARC Therapies株式会社
鈴木 蘭美
Eメール:[email protected]
SOURCE ARC Therapies株式会社
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